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顧客からも従業員からも支持される工場の作り方(前編) ──多々内モータース商会 多々内丈雄社長インタビュー

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今回は、愛知県岡崎市の「多々内モータース」を訪ねてお話を聞いてきました。従業員定着率100%、積極的な設備投資などのお話は、整備事業者が直面する多くの課題を乗り越えるヒントとなることでしょう。


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従業員の定着率100%! その秘訣は?

整備人材の確保や後継者不足への取り組み、高度化する自動車技術への対応、黒字化達成による健全経営の実現など、整備工場の経営者に求められるハードルは年を経るごとに高くなっています。

整備事業者が直面する多くの課題を乗り越えるヒントを求めて、今回は愛知県岡崎市の多々内(ただうち)モータースを訪ね、社長の多々内丈雄さんに話を伺いました。

合資会社 多々内モータース商会
社長 多々内丈雄さん

多々内モータース ウェブサイト

 

 

 

多々内モータースは昭和25年(1950年)創業、昭和32年設立の老舗で、年間車検台数では岡崎地域のトップを誇ります。経営環境の激変に苦労している整備事業者が多い中、多々内モータースは近年になって工場やサービスルームの増設に踏み切るなど『攻め』の経営を推進。しかも従業員の定着率100%を実現しています。その秘訣はいったいどこにあるのでしょうか。

聞けば、多々内モータースは整備士10名、フロントスタッフ6名の人員体制で、驚くべきことに、全スタッフが『生え抜き』とのこと。『高校卒業後に入社してそのまま在籍』というスタッフばかりで、最もキャリアが長い整備士は、高卒入社から現在まで『多々内モータース一筋27年』のベテランだと言います。

高い定着率の要因について、多々内さんは「誰もが働きやすく、誰もが楽しい職場を目指して、かねてから就業環境の改善に取り組んできたからではないでしょうか」と説明します。

一般的に、従業員の定着率が高い会社の特徴として、以下のようなポイントが挙げられます。

①同業他社に比べて給与が高い
②労働時間が少ない
③業界、業種の将来性が高い
④職場の人間関係が良好
⑤福利厚生が充実している
⑥多様で柔軟な働き方が選択できる

これらが満たされている会社は、従業員の定着率が向上すると言われています。

もっとも、上記のポイントのうち、給与や勤務時間など①~③のポイントについて、多々内さんは「他の整備工場と比較して、大きな差はないのではないか」と分析。それ以外の部分について、「限られたリソースの中で、できる範囲のことを実現しようと努力してきました」と胸を張ります。

従業員の責任感と納得感を高める打ち手

話を聞いていくうちに、多々内モータースの高い定着率のポイントは、「透明性」の高さと「自主性」の尊重にあることがわかりました。

人材の流出を防ぐための離職防止対策として、一般的には、定期的な個別面談の実施による意思疎通が有効と考えられています。面談で従業員からの要望を吸い上げ、その意見を就業環境などの改善につなげることができるからです。ところが、多々内モータースではあえて個別面談は実施せず、月に一度、全スタッフが顔を合わせる形式でのミーティングを実施していると言います。

「ミーティング時、要望があるスタッフには、他のスタッフたちの前でその要望を述べてもらうようにしています。そうすることによって、全スタッフの前で、会社として対応できることと対応できないことについて理由ととともに回答することができ、会社の方針に対する理解度を高めることが可能になります。同時に、要望の可否についての従業員の納得感も高めることができます。個別形式で面談を実施すると、各人からそれぞれ好き勝手に要望が上がってきてしまい、その一つひとつに対応することが難しくなり、不満が募りやすくなるなど逆効果が働くと考えています。集団形式でのミーティングは、かれこれ15年ほど続けていますね」(多々内さん)

ミーティングでは、スタッフから様々な要望が出されるといい、検討したうえで、できることから少しずつ改善に取り組んでいると言います。

「例えば、弊社では2年に1度、フロントの女性スタッフが着用する制服を更新することにしています。『自分たちが着る制服や履く靴くらい自分たちで選びたい』というニーズが上がってきたことを受けた措置で、女性スタッフ間で話し合って制服などを選んでもらうようにしています。自分たちで選ぶことによって責任感が芽生え、納得感も得られますから、不満が出たことはありませんね」(多々内さん)

一方で、『スタッフのため』と思って導入した設備が不評だったことも──。多々内モータースでは、工場およびサービスルーム増築時に『シャワールーム』を新たに設けましたが、ほとんど使用されていないとのこと。多々内さんは、「せっかく造ったのに、もったいない話です」と苦笑いを浮かべます。

他に、職場のコミュニケーション活性化やスタッフのストレス緩和にも気を配っているといい、それらを推進するために、休憩スペースに菓子パン類や果物などの軽食を常備。「業務終了後、みんなで談笑しながら、パンなどを軽くつまむことをルーティンにしています」と多々内さん。

「軽く食べながら雑談することによって、気持ちを『仕事モード』から『プライベートモード』へ切り替えてもらうための措置です。それを機に気持ちをリセットし、気分良く帰宅してもらうためにと思って始めました。仕事ではイライラしたりストレスが溜まったりすることもあるので、雑談によってそれらが解消したタイミングでの退社を推奨しています。帰途中の事故防止にもつながっていると自負していますし、仕事の品質向上にも一役買っているのではないかと考えています」(多々内さん)

また、多くの整備工場が苦心している『人材採用』についても、「うちは採用で困ったことがありません」と多々内さんは自信を見せています。

「今春も、高校を卒業したばかりのスタッフを新人として雇用しました。秘訣というほどのことはありませんが、弊社では、地元の中学校や高校からの職場見学や学生の仕事体験を積極的に受け入れており、工場内をくまなく見てもらっていますし、自動車整備に関するあらゆることについて説明しています。そうした地道な取り組みが奏功しているのではないでしょうか。最近では外国人整備要員を雇用する整備工場が増えていますが、目下のところ、弊社は日本人スタッフのみでオペレーションしています」(多々内さん)

後篇では、多々内モータースが実践している生産性を高める工夫のほか、設備投資、事業承継に対するスタンスについてレポートします。

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(掲載日)2021年10月26日

 

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